Tobii Proアイトラッカーで使われているアルゴリズムは、瞳孔の位置だけでなく瞳孔径も算出します。
アイトラッキングカメラで記録された目の画像とアルゴリズムから構築された3Dアイモデルによってアイトラッキングカメラから瞳孔までの距離が算出されます。撮影された画像の中の瞳孔の直径にスケール係数を換算し、瞳孔径として出力します。
瞳孔径の定義としてはいくつかの考え方がありますが、Tobii Proアイトラッカーによって使用される3Dアイモデルでは、瞳孔径は画像上の大きさではなく、実際の眼球内部の物理的サイズとして定義されています。
しかし、ほとんどの科学的研究では大きさの変化量を分析するため、瞳孔径の絶対値よりもその変化量が重要になります。Tobii Proラボなどのソフトウェアで瞳孔径の変化量を見ることができます。
生理学的覚醒、不安、認知負荷と処理、言語習得、発達、情報科学、人間のパフォーマンスなどにおける知覚の指標として様々な分野で瞳孔の反応が研究されてきました。
もし瞳孔サイズをアイトラッキングと合わせて研究する場合は、いくつかの点について知っておいた方がいいでしょう。
瞳孔測定研究では、これらの基礎を念頭に置いておくと、視覚的注意と、認知的または感情的反応を組み合わせて、人間の行動をより深く研究することができます。
アイトラッカーによる瞳孔径計測と、純粋な瞳孔径計測器との違いについて解説します。
純粋な瞳孔径計測器はカメラが眼球のすぐ前に配置されます。瞳孔とカメラが平行に配置されることによって瞳孔を正面から捉え、真円に近い状態で計測出来ます。その結果得られる瞳孔の画像は円の歪みがなく、正確な瞳孔サイズを出力します。しかし、眼球のすぐ目の前に配置するということは、被験者は瞳孔径計測器のシステムで呈示可能なものしか見ることが出来ないということを意味しますので視覚的注意の実験には向いていません。
対照的にアイトラッカーでは、やや下方から瞳孔を捉えるため被験者は画面やその他さまざまな対象を視覚刺激とすることが出来ますが、瞳孔画像は楕円として取得されます。ほとんどのアイトラッキングシステムはこの円の歪みのための何らかの瞳孔サイズの補正を行います。
純粋な瞳孔径計測器は、あらかじめパッケージ化されたいくつかのメトリクスを出力します。瞳孔のサイズや、縮瞳の反応時間、縮瞳や散瞳の速度、変化率、散瞳から75%まで回復までに要した時間などで、目や視覚における健康や病理検査のために設計されていて一般的には眼科医などで使用されています。
アイトラッキングシステムは、停留時間や、サッカードの長さ、対象箇所を見た回数などの基本的な視覚的行動に関連した様々な結果を出力した上で、記録したデータから瞳孔径の変化も再構築することが可能です。